診療情報の第三者提供
21.3.15
患者本人から診療情報の開示請求があった場合には、カルテ開示に応じるなどの必要があります。それでは、患者本人以外から、患者の診療情報の開示要望があった場合に、どのように対応すればよいのでしょうか。
患者の診療情報は、様々な場面で必要とされることがあります。例えば、傷害事件などの犯罪捜査のために警察が診療情報を必要とする場面、保険金の支払いのために保険会社が診療情報を必要とする場面、あるいは、職場が従業員である患者の健康状態を確認するために診療情報を必要とする場面などが考えられます。
このような場合に、医療機関としては、各機関からの問い合わせに対し、どのような対応をすれば良いのでしょうか。
患者本人以外に対する診療情報の提供は、個人情報の第三者提供に該当します。個人情報の保護に関する法律第23条(第三者提供の制限)第1項においては、「次に掲げる場合」として本人の同意を要しない4つの例外を定めています。①法令に基づく場合、②人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき、③公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき、④国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき、の4つです。
例えば、裁判所からの文書送付嘱託・調査嘱託、弁護士法23条の2に基づく照会などは、上記①法令に基づく場合に該当します。具体的に、どのような場合に、第三者提供が許されるかについては、個人情報保護委員会が作成している「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が参考になります。
なお、個人情報保護法に違反しない場合であっても、第三者に患者情報を提供する際には、民事・刑事上の守秘義務に違反しないように、また、患者のプライバシー権を侵害しないよう配慮することも必要となります。
第三者機関から患者本人の患者情報開示の問い合わせがあり、その対応に悩まれる場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。
名古屋丸の内本部事務所弁護士 木村 環樹